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テキサス州オースティン在住の単身赴任者の記録

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【天才か反逆者か】バンクシー展にて憂愁に沈む

(Image Creatorにて作成, バンクシーの絵とは関係ありません)



 

BANKSYLAND Austin

先日の土曜日、Austinで開催されているバンクシー展に行ってきました。正確には”BANKSYLAND Austin”というイベントです。

 

 

私は特にバンクシーに詳しいわけではないです。知ってることと言えば、世界各地のストリートや壁にネズミや赤い風船持っている女の子を描いてる正体不明のアーティストってぐらいです。

 

そのなかでも、2008年にオークションに出品された「風船と少女」が1億5000万円で落札された瞬間に、仕込まれていたシュレッダーが作動し、作品の下半分が裁断されてしまった出来事は記憶に新しいです。

 

しかし、バンクシーの作品が、何を訴えようとしているのか明確に言語化することができません。このバンクシー展にいけば、少しはそれが分かるかな、と思い行ってきました。

 

バンクシー作品

作品全体を見渡した印象は、兵士と子供が描かれている絵が多いです。戦いたくないのに戦わされている兵士、争い事など何も望んでいないのに、巻き込まれる子供。

 

根底に流れているのは、戦争の無い世界、権力への反抗、人間の消費欲・物欲への警告、などではないかと感じました。特に反戦を訴える作品には、もの凄いパワーを感じます。ロシア-ウクライナ問題、台湾を巡る米中問題の真っ只中なので、見る側のバイアスが働いてなおさらそう感じさせるのかもしれません。

 

以下、私の心に残った作品をいくつか。

CND SOLDIERS, 2005年

CNDとは、Campaign for Nuclear Disarmamentの略で、核兵器撤廃運動のことです。兵士が壁に描いているマークがCNDのシンボルマークです。兵士が何かを警戒しながら、核兵器撤廃運動のマークを壁に描いている、という作品です。バンクシーは反戦の表明として、この作品をイギリスの国会の前に設置したそうです。当局によりすぐに撤去されてしまったそうですが。

 

我々サラリーマンだって、会社(上司)から指示されたら、たとえ自分の意思に反してもやらないといけない業務ありますからね。兵士だって、人を殺したくてやってる人はいないだろうし。この兵士の気持ち、分かりますよね。

 

戦争も会社組織も事の大小の違いこそあれ全く一緒です。大橋巨泉が言うところの『戦争とは、爺さんが始めて、おっさんが命令し、若者たちが死んでいくもの』です。会社に置き換えると、『無茶な仕事とは、社長が言い出し、部長が命令し、社員が潰されていくもの』って感じですね。

 

Bomb Hugger, 2021年

Bomb Huggerは「爆弾を抱く人(ハグする人)」という意味です。この作品は日本では「爆弾と少女」として知られているようです。少女に爆弾を抱かせるって、とても切ない像です。全ての作品の中で、一番胸が締め付けられた作品でした。広島平和記念資料館に行った時を思い出しました。

 

Thrower, 2020年, 2022年

オリジナル作品はパレスチナのベツレヘムにある建物の壁に描かれたそうです。パレスチナ問題に焦点を当てており、火炎瓶の代わりに花束を持っています。戦争や暴力への反対を表しているのだと思います。

 

ただ、私は火炎瓶じゃなく、花束なんだから、覆面取って、正々堂々と顔出せばいいんじゃないかと思いましたけどね。

 

 

作品というよりはバンクシーのセリフだと思うのですが、『世の中を良くしようとする人ほど危険なものはない』という意味です。

 

戦争を起こす人たちは、それぞれに大義名分を持ち、それぞれの正義を持ってるから、タチが悪いです。世の中を良くするためなら、その過程において戦争は許されるの?大勢の幸せのためには、一部の人の不幸が許されるの?そういう意味で「世の中を良くする」という大義を持っている人は怖いのかもしれません。

 

「世の中を良くする」と言うのは最終的な目標で、そこに行き着くまでの過程が大事ですからね。私もこのセリフには共感するかな。

 

Christ With Shopping Bags

ショッピングバッグを持ったキリストです。きっと、クリスマスはプレゼントを贈るのが目的じゃないよ、とかお金があるからって何でもかんでも買えばいいってもんじゃないよ、と言う物欲に対する警鐘の意味だと思うのです。

 

でも、その真下がお土産のポスターやトレーナーを売っているコーナーだったので、私は混乱してしまいました。『なんでここにこの作品を展示したん?』とか『この作品見ながら、お土産買う気になる?』と思ったのですが、みんな結構買ってました。

Laugh Now, 2006年

『今は笑ってろ。いつか俺たちが取って代わる』と書いてます。まるで猿の惑星の世界観ですね。猿の惑星なんて、完全にSFの世界だと思ってましたが、世界は少しずつ少しずつ、でも確実に核による滅亡に向かっているような気がします。人間に取って変わるのが猿かどうかは分かりませんが、何かに取って変わられる時代はそんなに遠くないのかもしれません。

 

 

バンクシーの作品は、何が言いたいのか良くわからないネズミの作品が有名なため、その印象が強く私にはイマイチ掴みどころのない印象がありました。しかし、多くの作品を見ると反戦や反権力、そして穏やかな生活を願う気持ちが根底に流れているような気がします。しかも、多くの作品は、分かりやすくストレートに訴えかけてきます。

 

1億5000万円で落札された瞬間にシュレッダーが起動する、ということを仕組んだのも分かるような気がしました。作品を通して広く世に反戦を訴えたいのに、金・権力を持っていると言うだけで特定の人のものになることはきっと本人の望むところではないでしょう。自分の作品が自分の忌み嫌う人の所有物になるってことですからね。

 

いつ戦争が飛び火するか分からない不安定な世の中。バンクシーの想いが少しでも広がればいいなと思いました。

 

おまけ

色々考えてたら、意外とどよーんとした気持ちになってしまったので、美味しいものでも食べて帰ろうと思いました。

 

バンクシー展が開催された会場の近所に以前一度訪れたことがある、ロブスターロールのお店 Mason's Famous Lobster Rolls があるので、そこで食事して帰りました。

 

 

一度食べたことあるので知ってましたが、やっぱり美味しかったです。美味しいもの食べたら、どよーんとした気持ちも晴れますね。

今日の結論:世界平和の第一歩目は、美味しいもの食べる、ってことだと思います。

 

ロブスターロールとビスク

 

それでは、またー

 

 

⇩AI画伯『Midjourney』にバンクシー風の絵を描かせてみたお話。