はじめに
以下で白雪姫を絵画史に代表される絵画様式に当てはめてImage Creatorがどのように表現するかを見ました。これらの記事では古典絵画、近代絵画ともに西洋が対象となっています。
では次に『もしも、いろんな国の画家が白雪姫を描けばどんな表現になるのか』と思い、試した結果が今回の記事になります。「おまえ暇なんか…」と思われそうですが、そう、どちらかと言うと暇なんです。米国に戻ってくる道中もこれで遊んでました。
東アジア圏
● 日本
まずは日本です。現代画では特徴がでないので、白雪姫にUtamaro artというキーワードを追加して描かせてます。美人画を多く描いた喜多川歌麿のテイストが入ったものになっています。
何回描いても、目は細い線で表現されます。パッチリお目々にはなりません。この時代は目が細い方が特に美人とみさなされていたようですね。
● 中国
白雪姫にChinese folk artを追加しています。「国名+folk art」でその国らしい絵が描けます。folk artとは、その土地固有の文化から生まれた芸術・絵画のことです。ちょっと天女を彷彿とさせる美人画になりました。服の模様もとても綺麗。良くもまあ、元の衣装の雰囲気を残しつつアジアンなテイストを入れれるものです。
● 韓国
韓国の民画のことをminhwaというので、Minhwa styleという指示を与えています。Minhwa = Korean folk paintingです。中国と区別がつけにくいけど、韓国の国花であるムクゲらしき花、国鳥であるカササギらしき鳥が描かれているので、これが韓国です。
● ベトナム
ベトナムには伝統的な絵画様式として絹絵(きぬえ、シルクペインティング)が有名なのでVietnamese silk paintingと指示しました。絹絵とは文字通り絹の布に描いた絵のことです。ベトナムは中国統治の時代もあるからか天女を思わせる雰囲気は中国に近いような気がします。蓮の花はベトナムの国花なので、蓮の花っぽい花がベトナム感を出してますね。
東アジアで描かれる女性は、いずれも控え目な印象を受けます。使われている色合いも淡い色あるいはくすんだ色が多く、あまり原色は使われません。長い髪を団子にすることも特徴的であるように思います。
その他のアジア圏
● インドネシア
インドネシアのバリ島で発展した伝統的な絵画スタイルにKamasan絵画というものがあります。ここではKamasan paintingと指示を追加しました。
● インド
ムガール絵画(Mughal painting)を指示しました。Mughal paintingはインドのムガール帝国時代(16世紀から19世紀初頭)に栄えた絵画スタイルです。繊細な筆致と精巧な描写が特徴的です。色使いは鮮やかであり、美しい赤、青、緑、金などの色が多用されます。
● チベット
チベットは中国支配の国と考えると東アジアに含まれるのかもしれませんが、文化的には南アジア圏と思われるので、ここではその他のアジア圏に入れます。チベットはチベット仏教の伝統絵画であるタンカ絵画(Thangka painting)が有名なので、Thangka paintingを指示しています。
同じアジア圏でもこれらの国と東アジア圏とでは明確な違いがあるようです。色合いもハデになるし、女性の目鼻立ちもくっきりしてきます。インドのこの絵に限っては、かなり中東の影響を受けているように思います。
中東
● イラン
古くはペルシャと呼ばれていた国です。Qajar artと指示しました。Qajar artとはイラン(ペルシャ)で 1781 年から 1925 年まで続いたガージャール王朝 (Qajar dynasty)の芸術、建築、芸術形式を指します。華やかな色彩、細部にわたる装飾、ヨーロッパの影響を受けた写実的な表現などを特徴とします。
● トルコ
トルコも細密画が有名なので、トルコ細密画 (Turkish miniature painting)を指示しています。また服や周囲の模様にTezhipというトルコ特有の繰り返し模様が使われています。
● モロッコ
Moroccan folk paintingです。モロッコの芸術様式はTazouaqtと呼ばれる複雑な幾何学模様が特徴です。トルコのTezhipとの違いが私には分かりません。下の絵でアーチや衣装にあしらわれている模様がそれです。下の方にいる白いキツネみたいな生き物はフェネックギツネってことかな。
中東になるとかなりヨーロッパの雰囲気に近づきますが、やはりアジアの雰囲気も残っています。特に人物の顔はヨーロッパに近いですが、服飾の模様はアジアに近いような気がします。
ヨーロッパ
● セルビア
東南ヨーロッパに含まれるセルビアです。ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアなどに囲まれている国です。セルビアはナイーヴ絵画(Serbian Naive painting)が有名なので、それを指示に入れてます。
● スカンジナビア
Scandinavian Folk Artと指示しました。スカンジナビアはスウェーデン、ノルウェー、デンマークの北欧3国を示す言葉です。確かに北欧はこんな感じの可愛いイメージがあります。この絵でも使われていますがScandinavian Folk ArtではRosemalingと呼ばれる植物をモチーフとした装飾が特徴のようです。
● ケルト
Celtic folk artと指示しました。ケルトとは文化圏を示す言葉であり、特定の国を指す言葉ではありませんが、今ではアイルランドが主なケルト文化の地域になるかと思います。下の絵はアール・ヌーヴォーにも通ずるものを感じます。時間的にはアール・ヌーヴォーの方が後なのでアール・ヌーヴォーの画家たちはケルト文化の影響を受けているのでしょう。
同じヨーロッパ地域のfolk artでも東南圏、北欧圏、ケルト圏では雰囲気が全く異なるので面白いです。ヨーロッパは髪型を団子にせず、おさげにしているパターンもよく出てきます。
その他の地域
● タンザニア
南アフリカに位置するタンザニアです。なぜタンザニアを選んだかというとタンザニアにはTingatinga artという特徴的な様式の絵画があります。Tingatingaアートは、タンザニアのエドワード・サイディ・ティンガティンガ(Edward S. Tingatinga)に由来しています。彼は1960年代にこのスタイルを開発し、独自の絵画技法を生み出しました。
● メキシコ
私の大好きなメキシコです。メキシコは近年壁画アートが活発なので、壁画(Mexican muralism)を指示しました。確かに壁画アートにありそう。ドクロを描いてるのに、なぜか元気が出る色使い。ここにもRosemalingの模様が登場するのでメキシコとヨーロッパとの繋がりも感じられます。
● 南米
南米の絵画様式おいて特徴のある国を見つけられませんでした。ですからSouth American folk paintingとして南米括りで描かせました。もしも白雪姫がジャングルに迷い込んだら、こんな感じなのかもしれません。
AIがどの絵を参考にしてこれを描いたのかわかりませんが、かなりセンスある絵だと思います。
● オーストラリア
アボリジナルアート(Aboriginal Art)は、オーストラリアの先住民であるアボリジニやトレス海峡諸島の人々によって制作される伝統的な芸術形式です。これはアボリジニ文化の一環として位置づけられています。アボリジニは神話の世界(Dreaming, ドリーミングという)をドットペインティングの手法を使って表現するのが特徴のようです。
● ポリネシア
ポリネシアは太平洋でニュージランド、サモア、ハワイなどを含む領域です。Polynesian folk art paintingとしています。トライバル柄 (tribal print)のタトゥーを入れた白雪姫になりました。ちなみにタトゥーはポリネシア領にあるタヒチ発祥です。タヒチ語で叩き込む・刺す・書き込むことを「タタウ」と言うそうなのですが、それが転じてタトゥーになりました。
こうやって見てると、タトゥー文化と絵画におけるドットペインティングには関連がありそうな気がします。タトゥーは皮膚にぷすぷす刺して描いていくので、その技術を使ってドットペインティングにも応用したのではないかと思えてきます。
最後に
どの国の画家も上手に自国風にアレンジして白雪姫を描きますね。感心します。
最近、目を覆いたくなるようなニュースが多いです。心のバランスを保つためには、美しいものを観たり、綺麗な音楽を聴いたり、美味しいものを食べたり、ってことが必要じゃないかと思います。油断すると悲しいもの、ネガティブなものに埋もれてしまうので、意識して美しいもの、綺麗なもの、おいしいものに触れるようにしましょう。
それでは、またー
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