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テキサス州オースティン在住の単身赴任者の記録

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Beyond Van Gogh & Beyond Monet

 

 

はじめに

少し前にAustinで開催されている"Beyond Van Gogh & Beyond Monet"というイベントに夫婦で行ってきました。その内容についてです。

 

Beyond Van Gogh & Beyond Monet

このイベントはVan Gogh(ヴァン・ゴッホ)Claude Monet(クロード・モネ)の作品を展示する美術展ですが、壁に額縁の付いた絵を展示するという従来の絵画の展示手法とは大きく異なります。

 

Beyond Van Gogh & Beyond Monet はゴッホとモネの作品が最新のプロジェクション技術とオリジナルのサウンドトラックと共に、映画のようなマルチメディア体験ができるイベントとのことです。

 

ゴッホの「星月夜」「ひまわり」をはじめトータル約300点の作品が、モネの「散歩、日傘をさす女性」をはじめ約400点の作品が展示されているそうです。展示といってもプロジェクションなので多くは投影されるだけなのですが。

 

会場は大きく2つのゾーンで構成されてました。最初に、ゴッホやモネの人物像や代表的な作品を説明するエリア。ここはプロジェクションではなく、衝立でいろんな解説が書かれたり、垂れ幕で絵が吊るされたりしてました。

会場の入り口入ったとこ

その後にプロジェクションのエリア。ここはテニスコートぐらいの大きな部屋の周囲の壁に作品が投影され、次々に絵画が入れ替わっていくという仕組み。ゴッホ、モネ両方の全てのプロジェクション(つまり動画)を見ましたが、各30分、合計1時間ぐらいの長さの動画であったように思います。

 

会場内の椅子には限りがあります。私たちが訪問したときは、そんなに混んでなかったので椅子に座ってゆっくり1時間鑑賞できました。

 

Beyond Van Gogh

簡単にゴッホとモネを振り返ります。以下は最初のエリアにあったゴッホの説明文です。ゴッホの苦悩がうかがえます。また文章の後半は弟テオに送った手紙の一文が引用されてます。

 

ゴッホの苦悩がうかがえます

ゴッホは精神的に非常に不安定で、一説には双極性障害を患っていたと言われています。ゴーギャンとの微妙な関係性や自分で自分の耳を切り落とした逸話は有名です。

 

きっと人付き合いが苦手であっただろうと思われるゴッホなのですが、その唯一の理解者が弟のテオでした。ゴッホとテオはお互い信頼していたようで、ゴッホがテオに送った多くの手紙が残されています。

こちらもテオに送った手紙の一文が記されてます

上の写真ではLove always causes trouble, that's true, but in its favour, it energizes(愛は常に問題を引き起こす。一方で活力を与えてくれる)と書いてます。

 

プロジェクション時の1シーン、ひまわり

このenergizeというのは彼の作品に共通する特徴の一つを的確に表しています。ゴッホの絵は、基本的に非常にエネルギーに溢れており、情熱的で大胆な印象を受けます。

プロジェクション時の1シーン、星月夜

プロジェクションなので、もっとゆっくり見たい!と思っても次々に流れていきます。一方で、360度全周囲の投影なので、絵が迫ってくる迫力は通常の絵画にはないものがあります。通常の絵画の代替にはなりませんが、絵画の別の楽しみ方として、全然アリだなと思いました。

Youtubeにあった紹介動画です。

 

Beyond Monet

一方、モネはゴッホと人間性もその作品も大きくタイプが異なります。ゴッホの享年が37歳(自殺という説が濃厚)であるのに対して、モネは86歳です。きっと精神的にも肉体的にも健康な人生を歩んだのでしょう。

モネの紹介。当時の近代化するパリの表現が彼の作品の特徴の一つのようです。

以下の写真には彼が購入したGiverny(ジヴェルニー)について記載があります。モネは睡蓮に代表されるように池のある庭の絵をいっぱい描いてますが、それは自分でジヴェルニーという地方で購入した庭がテーマになってます。

Giverny(ジヴェルニー)について記載

庭に日本風の橋を設置してみたり、睡蓮を置いてみたり、自分が描きたい絵の元ネタを自ら庭に構築していたようです。自分で描きたくなるような庭を作ってたんです。すごいですね!

モネの描く女性シリーズ

こちらは、椅子に寝転がって没入しちゃう人。いや、確かにモネの絵観てたら寝転がりたくなるの分かります。

椅子に寝転がって没入しちゃう人

動画を撮ってないので伝わりにくいですが、単に絵が投影されるだけでなく、絵によっては対象物が動きます。例えば、上の絵であればボートが池を進んだり。アルジャントゥイユの鉄道橋では、汽車が線路を進んだり。

 

きっとAIの力を借りてるんだと思いますが、不自然感は残るもののモネ作のアニメーションを見てるようで面白かったです。

 

 

何より、ゴッホの絵とモネの絵をプロジェクションで30分づつ鑑賞できるので、両者の作品の違いがはっきりわかります。迫力のゴッホ、淡い美しさのモネ。

 

ゴッホやモネがこのような展示の仕方を見て、喜ぶのか苦い顔をするのか知る由もありませんが、絵画や画家に興味を持つきっかけになるのであれば、きっと彼らにとっても喜ばしいことなのでしょう。

 

最後に

作品ひとつずつ、じっくり鑑賞したい方には向かないと思いますが、ゴッホやモネが生涯においてどんな作品を残したのか、全体的な傾向を短時間で俯瞰したい方にはいい表現方法ではないかと思います。

 

「じゃあYoutubeでいいんじゃないの?」ってことなんですが、やはり360度投影ってこともあって、迫力や没入感はパソコンや携帯の画面からは得られない効果かと思います。芸術とテクノロジーの融合という意味で、今後こんな表現が増えていくんだろうなと思わせるイベントでした。

 

それでは、またー