THE TIME YOU ENJOY WASTING IS NOT WASTED TIME

テキサス州オースティン在住の単身赴任者の記録

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オペラ『カルメン』への想いを語る。

 

 

はじめに

今日5月5日、Austinで公演があったオペラ「カルメン」を鑑賞してきたので、それについて書きたいと思います。

私、個人的にオペラ「カルメン」にはめちゃめちゃ思い入れがあって「いつか観たい、いつか観たい」とずっと思ってました。その願いがここAustinでようやく叶いました。

私がずっと観たいと思っていた理由や今日観た「カルメン」の感想など。

 

オペラ「カルメン」とは

オペラ「カルメン」を簡単におさらいすると、作曲者はビゼー、初演は1875年(日本の明治8年)。物語の舞台はスペイン、セビリア。オペラは四幕構成です。カルメンの前奏曲といえば、言わずと知れたクイズSHOWbyショーバイ「何を作ってるんでしょーか?」のBGM(ピンと来るのは40歳以上の方でしょうか)です。

 

一幕:タバコ工場で働く妖艶な女性「カルメン」。男性は皆彼女にメロメロになります。軍隊の「ホセ」もその一人。しかし一幕ではホセの同郷の女の子ミカエラも登場するのですが、ホセはミカエラに「いつか結婚しような」と言いながらキスします。

以下の動画は一幕で「カルメン」がHabaneraを歌うシーン。曲名Habaneraを知らなくても曲は誰でも知っている。このシーンがカルメンはどんな女性なのか端的に表してます。


カルメンはタバコ工場の同僚と喧嘩騒ぎを起こして、牢屋に入れられそうになります。しかし、カルメンは上手くホセを手玉に取って牢屋に入る前に逃げ出します。カルメンを取り逃したことを問題視され、代わりにホセがしばらく牢屋に入れられます。

 

二幕:牢屋からホセが出た日、酒場でカルメンとホセが再会します。カルメンは「お詫びにあなた一人のために踊る」といってホセの前で妖艶な踊りを披露します。そして、ホセに「軍隊なんか辞めて自分と一緒にジプシー(このジプシーは密輸をやっている)やろうよ」と誘惑します。ホセは自分の上司(この上司もカルメンにちょっかい出してた)とカルメンのことで揉めちゃったこともあり、カルメンの提案を受け入れジプシーの一員になってしまいます。

 

下は「ごめんって。あんたのためだけに特別に踊るから許してよ。私と一緒にジプシーになろうよ」って誘惑するシーン。うーん、これやられたら男は完落ちするのかなぁ。



三幕:全てを捨ててジプシーになり密輸を手伝うホセ。しかし残念なことにカルメンはすでに他の男性に気が移っています。それは闘牛士のエスカミリオ。それを知ってエスカミリオにウザ絡みしに行くホセ。そんな中、ホセは故郷の母親が重い病気であることをミカエラの知らせで知ります。もうホセのことが好きじゃないカルメンは「早よ帰ったりなよ」と促し、帰るホセ。

 

四幕:セビリアの闘牛場のシーン。エスカミリオは闘牛士として闘牛場に入って行く。闘牛場の中では、エスカミリオと闘牛が、外の広場でカルメンとホセが戦っているという四幕の構図。広場で再会したカルメンとホセ。エスカミリオへの歓声を背に、やり直そうと提案するホセに聞く耳を持たないカルメン。ホセは激昂し、カルメンを殺してしまいます。立ち尽くしたホセの姿でエンディングを迎えます。

 

とまあ、こんなストーリーです。設定を少し変えれば、現代でも繰り広げられている男と女の愛憎劇。振り回す系女子と振り回される系男子の成れの果て。高尚なオペラはとっつきにくいですが、オペラ初心者にはもってこいの昼ドラ的な俗っぽいストーリーとキャッチーでドラマチックな音楽。

 

ご存知ない方はYoutubeで是非全編をご覧ください。上に貼ったやつは全編あります。全部で2時間40分です。

 

なぜ観たかった?

で、なぜ私がオペラ「カルメン」に思い入れがあって、観たかったのかというと「カルメン」みたいな妖艶な女性が私のどストライクに好みの女性だから。

ってわけじゃないです。私なら間違いなくカルメン(ドラクエVでいうデボラ)ではくミカエラ(ドラクエVでいうフローラ)を選びます。そうではなく、私若い頃に「カルメン」にちょい役で出たことがあるからです。

 

今から約30年前。1993年5月、神戸・アーバンオペラハウス公演というのがあったのですが、色々あってそれにちょい役で出させていただきました。ちょい役といっても1幕から4幕まで全てに出番がありました。

1幕。私も写ってる。

管弦楽は大阪フィル、指揮者は飯森範親さんだったのですが、この方はこの年の翌年から東京交響楽団の専属指揮者になり、さらにその後正指揮者になった方です。

 

プロの声楽家以外は寄せ集めだと思うのですが、最初の寄せ集め集団の状態から数ヶ月間の特訓を通して、洗練された作品に変えていく。その過程を中から目の当たりにできて、ほんとに貴重な時間でした。

 

人生をロールプレイングゲームに例えると、学業、仕事、恋愛、結婚などのメインストーリーとそれ以外のサブストーリーがあると思うのですが、私のサブストーリーの中で上位に入るいまだに色褪せない、思い出深いイベントです。

4幕。私も写ってる。写真はちょっと色褪せてるけど

なので、カルメンのあらすじどころか全場面の意味も音楽もめちゃめちゃ知ってるんです。これは日本語に訳されたオペラだったし。しかし舞台に立ったことはあるのに、客席から観たことが一度もなかったんです。そして、とうとう今日、舞台に立ってから31年越しにここAustinで客席から観るチャンスを得た、ということです。

 

自分が出た公演のVHSビデオを持ってるのですが、もう十年以上前に家のVHSビデオは壊れたので、それも長く見れてないです。一度業者に出してDVDに移そうとしたのですが、「著作権によりこのVHSはDVDにコピーできません」と断られてしまいました。もう見れないかもしれない。。。

 

Austin Operaのカルメン

今回の公演はAustin Operaによるものです。3ヶ月前にマリアッチ・オペラなるものを観に行ったのですが、それと同じです。会場はThe Long Center for the Performing Arts、これまでオペラやバレエで何度か訪れている場所です。

会場からの景色。今日もお天気やや悪め。

今回のAustin Operaのカルメン。とても良かったです。私の記憶と比較するとセットの豪華さは私が出演したのと同じぐらいだと思いますが、衣装はこちらの方が豪華でした。豪華というかバラエティに富んでるというか。

 

あと全体的に演出が大人な感じでした。例えば、二幕は酒場のシーンなのですが、脇役でも男性と女性が抱き合ったり、キスしたり。カルメンが自分の胸にホセの顔を押し当てて誘惑する歌を歌ったり。ホセとミカエラ、ホセとカルメンがやたらキスしたり。「こんなドキッとするシーン多かったけ?」と思いながら見てました。

 

始まる前。ご年配の方が多い印象でした。

四幕への間奏曲(Aragonaise)のところで、私が出たやつはフラメンコダンサーが登場(男性一人、女性二人)してフラメンコを披露しました。それがめちゃめちゃかっこよかったんです。ニワトリみたいな動きなのに、なぜかめちゃめちゃカッコイイ。なので、それを期待してたのですが、その演出はなかったです。残念。

 

私の思ってるのと同じようなのがYoutubeにあったので、それ貼っときます。Aragonaiseは曲もめっちゃカッコいいのです。私が仕事で大事なプレゼンする前に必ず聞く曲です。このステップで登壇します。

 


そして、どういう演出上の意図かわかりませんが、最後ホセがカルメンを殺す時、刃物で刺すのではなく絞殺でした。なんで?闘牛とシンクロさせてるからこその刃物だと思ってたのですが。最後、ちょっと驚きました。

 

もう一個驚いたことが。若い頃は「ホセ、可哀想だなぁ」とホセに同情したのですが、今回見終わった一番の感想は「カルメン、可哀想だなぁ」とカルメンに同情しました。

 

今回の演出がそういう印象を抱かせたのかもしれませんが、ホセのDV気質が気になりました。カルメンと喧嘩した際に何度か暴力的な振る舞いをしてました。それ見て「ホセ〜、令和にそんなことしてたら、そりゃ女の子に嫌われるでぇ」と思いました。私も大人になって感覚が違ってきたのかもしれません。あるいは単に演出の与える印象の違いだけかもしれませんが。

 

いずれにしてもカルメン見て、どちらに同情するかってのは一つの試金石になるかもしれませんね。

 

最後に

自分の期待と違う部分もあったけど、演奏と歌はどれも素晴らしくあっという間の3時間でした。今回歌はスペイン語でしたが、ステージ上に英語訳が表示されてました。

 

見てる途中に記憶が蘇ってきて、歌詞が勝手に日本語変換される場所が随所にありました。帰ってきてもうすでに忘れちゃって、思い出した日本語が思い出せないんだけど、曲聞いて、そのシーン見たら日本語思い出すっていうカラクリになっているようです。

 

それにしても懐かしかったです。カルメンはいいね。というかオペラ、バレエ見た時いつも思いますが、作曲した人はもちろん天才だし、それを演じる人、演奏する人、指揮者、演出家、みんなほんとに天才(というか私がどれだけ頑張ってもいけないところに行ってる人)だと思います。

 

それでは、またー