THE TIME YOU ENJOY WASTING IS NOT WASTED TIME

テキサス州オースティン在住の単身赴任者の記録

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映画『ドライブ・マイ・カー』を観て

(Image Creatorにて作成)



先日の土曜日にドライブマイカーという村上春樹原作、西島秀俊主演の映画を観てきました。日本では昨年8月に公開されています。カンヌ国際映画祭の脚本賞に加え、ゴールデングローブ賞も取ったので、今後益々注目を得る作品かもしれませんね。

 

  • 3時間弱という長い映画です。軽い気持ちでは観れません。
  • ネタバレしない範囲の感想を書いてます。
  • 役者さんは皆さん魅力的。家族のあり方を考えさせられる映画でした。

 

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AFS CINEMA

今、このAFS (Austin Film Society) CINEMAという映画館では期間限定で、「ドライブマイカー」「となりのトトロ」「竜とそばかすの姫」という3作品を上映してます。

 

せっかくアメリカに住んでるんだから、洋画をみたら?と思われるかもしれませんが、それは私にはハードル高めです。雰囲気ぐらいは理解できるでしょうが、完璧に理解するには至らないので、お金がもったいないです。ちなみに、これの前に米国で見た映画は「Demon Slayer (鬼滅の刃)」でした。

 

そんな感じで、たまに上映する日本の作品を見に行ってます。

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My neighbor Totoroがとなりのトトロ。Belleが竜とそばかすの姫です。

しかし、さすがカンヌ国際映画祭で賞を取ってる村上春樹作品とあって、劇場は思ってたより人が入ってました。7割ぐらいは埋まってたんじゃないでしょうか。ざっと見渡しただけですが、アジア人と思われる人より現地の人が圧倒的に多かったです。

 

私の感想(ネタバレはありません)

まず3時間弱の作品とあって、長いです。爆破シーンや戦闘シーンなしの3時間弱は、途中で「なげーよ…」と思っちゃいました(笑)。車運転してる時間長いのに、カーチェイスもないですからね。映画なのに、道路交通法、完全遵守でしたよ。

 

気になったのが、やたらタバコを吸うシーンが多いことです。ヤクザやチンピラの演出としてタバコを使うのは全然いいのですが、今のご時世に普通の人がこれだけ頻繁にタバコ吸うシーンがあるのは、日本人として恥ずかしい、という気持ちすら湧きます。タバコ吸うシーンを全部カットして少しでも時間を短縮して欲しいです。それともタバコという小道具を使わないと、あの物憂げな雰囲気の演出ができませんか?

 

あと、日本語音声で英語字幕だからという理由で観に行ったわけですが、俳優が英語でしゃべるシーンも結構ありました。当然ですが、ここ米国では、英語のシーンに日本語字幕は付きません。西島秀俊が英語で喋るシーンなんか、ちょっとダマされた気分になりましたよ(笑)

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上映する映画も凝ってるおしゃれな映画館です

ストーリーは、心に傷を負っている者同士が、立ち直るために、お互いの傷を見せ合い、自らその傷と向き合い、掘り下げていく、って感じです。後半はお互いの傷口に塩を塗るようなシーンが多く、観ていて痛々しいのですが、そのセリフや映像はどこまでも詩的で耽美的です。

 

私が知っている俳優さんは、西島秀俊と岡田将生だけでした。私、失礼ながら岡田将生って特に演技が凄いっていう印象を持ってなかったです。しかし、この映画の中で、車の後部座席で長回しするシーンがあるのですが、そのシーンでの彼の語りは見事でした。鳥肌ものです。表情、声のトーン、セリフの長さ。どれもが凄いと思いました。

 

他にドライバー役の女性(三浦透子、この女優さん、サントリーCMの二代目なっちゃんだって!)、韓国人役の男性(ジンデヨン)と女性(パクユリム)は雰囲気作るのが上手い役者さんやな、と思いました。パクユリムは聴覚障害があるため、手話で表現するのですが、手話と表情だけで、あれだけの雰囲気を作るのですから、恐れ入ります。

 

私が特に印象に残ったのは、この3人ですが、それ以外の役者さんも皆それぞれに個性が表現されてると思いました。映画の中で、ほとんどの俳優は舞台俳優の役を演じています。つまり、演じる役者の役を演じるという難しい役どころだと思うのですが、皆それぞれに個性が表現されていたと思います。

 

三時間と長い映画なのですが、詩的なセリフ、耽美的な映像にどの程度心奪われるかで、長いと感じるかあっと言う間と感じるかが分かれるのではないかと思います。私は、「綺麗なセリフ・映像やなー」と思いつつも、タバコのシーンや必要性がよく分からない運転シーンなど何箇所か私的に興醒めするシーンがあったので、長いなと感じました。

 

夫婦や親子のあり方とは

いくら夫婦・親子といえども、他人である以上、心の中を完全に読み取り、理解するのは不可能なこと。不可能だからと目を背けるのか、不可能であっても理解しようとし続けるのか。

 

はたまた理解し続け、奥深く理解することは、二人にとって幸せなことなのか、不幸なことなのか。結局、相手を理解しようとする行為は、自分自身を見つめようとする行為と同じではないのか、などなど。家族のあり方を考えさせられました。

 

特に夫婦/恋人同士のうちのどちらか一方が心に闇(相手を裏切っているような後ろめたい事)を抱えておられるなら、一緒にこの映画を観ない方がよいでしょう。映画館出たあとで、車で逃避行したくなっちゃいますよ。

 

いずれにせよ、長い映画ですので、観る際はお尻の痛くならない椅子に座って、腰を据えてご覧くださいねー

 

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