はじめに
本日は私の誕生日でした。........... あっ、ありがとうございます(おめでとう!と言ってくださった皆様に)。
といっても楽しい誕生日イベントは特になく今月末、日本に一時帰国しようと思っているので、その間の仕事の遅れを少しでも減らそうと今日はオフィスに行って仕事してました。
アパートに帰って来てからも特に予定ないので、なんか映画でも観ようと思って観た映画のお話です。
世界で最も孤独な鯨
私が今日で何歳になったのかはプライベートなことだし、身バレにもつながるので言いたくないですが、せっかくの誕生日なので自分の歳に関係ある映画を観ようと思いました。
そして、検索して目に留まったのが"The Loneliest Whale: The Search for 52"というドキュメンタリー映画です。邦題はないですが「世界で最も孤独なクジラ"52"を追い求めて」って感じでしょうか。アメリカで2021年7月に公開された映画です。
皆さんは52ヘルツの鯨 (52-hertz whale) って言葉を聞いたことあるでしょうか?
鯨は声を出してお互いコミュニケーションを取るのですが、その声には決まった周波数(単位はヘルツ, Hz)があります。シロナガスクジラなら10~39Hz、ナガスクジラなら20Hzらしいです。
しかし、クジラ界ではありえない52Hzのクジラの声が1989年から観察されているのです。そして、そのクジラは他のクジラとコミュケーションを取っている様子が一度も観察されていません。一人で声を出し続けています。大型クジラの寿命は60〜70年とのことなので、まだ生きていると考えられています。
専門家によると「他のクジラにこのクジラの声は聞こえてないであろう」とのことです。つまり、声は出せるのですが誰にも聞いてもらえずに生きています。このクジラのことを52ヘルツの鯨(52-hertz whale)、あるいは単に52と専門家は呼んでいます。今までその姿を映像に収めることはもちろん、目撃されたこともありません。
その声の特徴や声から推測される生息域から種の同定も研究されていますが確定するには至っていません。シロナガスクジラと他の種の混血あるいは奇形種であろうと言われています。
映画「The Loneliest Whale: The Search for 52」
そして、このドキュメンタリー映画の概要なのですが、以下ネタバレ含むので嫌な方は読まないでください。といっても日本語字幕のない映画なので、私の理解も怪しいですが。
かつてテレビ番組「イッテQ」でオーシャンズ金子がマンタの大群を探す、って企画がありましたが構成はあれと一緒です。シビアさは全然違いますけど。
いろんなジャンルの専門家5人が集まって、過去この時期にこの辺りにいたという調査結果から一週間、太平洋アメリカ西海岸側をソナー、ドローン、トレイルカメラ(クジラに貼り付けるカメラ)を駆使して52を探す、という内容です。最終、52Hzの声は採取できるのですが、その姿を納めることはできていません。
しかし、クジラを探すこと以外にもいくらか興味深い話が盛り込まれています。例えば、この52は他のクジラとコミュニケーションを取っている形跡が過去観察されていないので「孤独なクジラ」と人は勝手に呼んでいますが、クジラは本当に孤独を感じるのかとか。
これについてはクジラの脳の研究結果から、多分孤独を感じるであろう、とのこと。人間の感情を司る脳の部分に多く存在する細胞と同じタイプの細胞がクジラの脳にも見られるそうです。
また、このクジラの孤独は人間にも通づるものであり、クジラの研究を通して人間の孤独を研究しているのだ、という言葉があったり。人間の文明(特に船舶の出す音)がクジラのコミュケーションをとんでもなく邪魔している、という話があったり。
クジラの声は何百キロも海の中を飛んでいくので、船舶が登場するまでは、彼らは海の中で我々のSNSのようなネットワークを構築していたらしいです。それが今、船舶によりSNS網が破壊されています。52Hzのクジラ以前にクジラを孤独に追い込んでいるのは、人間です。
クジラ探索に使われているソナーは、その昔、ロシアの潜水艦の出す音を調査する目的でアメリカが開発したソナー技術が使われていたり。などなどクジラ探索以外のエピソードも盛り込まれてました。
あと、私が大好きなコメディードラマ"Big Bang Theory"に出てる女優さんKate Micucciが短いですが映画内でインタビューを受けてます。「人間誰しも人生の中で孤独を感じる時がある。だから多くの人がこのクジラに共感し、関心を持つのだろう」というコメント言ってます。Big Bang Theoryの中で、この方かなりのコミュ障でしたからね笑
さらに、この映画のExecutive Producerの中にレオナルドディカプリオの名前がありました。やっぱり今でも海、好きなんですね笑。でも船には乗ってませんでした。
というのは冗談ですが、彼は海洋生物の保護を目指すこの映画監督の支援者の一人で、この映画制作に5万ドルの寄付をしています。
小説「52ヘルツのクジラたち」
そして、これまた今日知ったのですが町田そのこ氏の小説で「52ヘルツのクジラたち」という小説が2021年の本屋大賞を受賞していますね。しかも2024年には映画化されるとか。
ただこれはクジラのお話ではなく、児童虐待、家庭内DV、トランスジェンダーなどを扱った作品のようです。声を出しても聞いてもらえないってところからインスパイアされてるんですね。
最後に
声出せるのに、その声が他の人に届かないって確かに辛いですよね。透明人間になってしまったような感じなのかな。でも、このドキュメンタリー映画は、悲しい終わり方ではなく、もしかしたら52Hzで声を出すクジラが離れた場所で2頭いるかもしれない、という可能性を示唆して終わります。この2頭が出会える日が来ればいいですね。
この映画でクジラの声が何度も流れますが、クジラの声ってすごく切ない声なんですよね。私は自分の50何回目かの誕生日にちょっと切ないドキュメンタリー映画を観て過ごしてしまいました。でも当たり前すぎて特に考えたことないけど、自分の声が他人に聞こえることに感謝すると同時に、ほんとに他人の声が聞こえてるかなと振り返らないといけませんね。
それでは、またー