最初に
一富士、二鷹、三茄子。
皆さん、初夢は見られましたでしょうか?
今日はせっかくの新年ですので、「夢」の話を。
「夢」が持つ二つの意味
ご存知の通り「夢」には大きく二つの意味があります。一つは「眠っている間に、種々の物事を見聞きすると感ずる現象」を表す夢。「昨夜見た夢は怖かったなぁ」の夢です。これを以降、「睡眠時の夢」と呼びます。
もう一つは「将来実現させたい希望や理想」という意味の夢。「将来、宇宙旅行に行くことが夢です」の夢です。これを以降、「覚醒時の夢」と呼びます。
「夢」と「dream」という言葉の不思議
これって、よくよく考えると不思議ではないですか?「睡眠時の夢」と「覚醒時の夢」って、全然別モノなのに、同じ「夢」という言葉を当てはめています。「睡眠時の夢」は生理現象です。受動的な感じがあります。「覚醒時の夢」はもっと能動的です。強い意志を感じます。
さらに不思議なのは、英語のdreamも「睡眠時の夢」と「覚醒時の夢」の両方の意味を持っていると言うことです。
日本語でも英語でも、全く異なる2つの現象に同じ言葉を当てはめています。これって偶然でしょうか?それとも何か理由があるのでしょうか?
「夢」の意味形成
不思議に思ったので、少し調べてみました。正解かどうかは分かりません。ネットの情報なんて嘘で溢れていますからね。まぁ、一つの説として、お聞きください。
まず、明治時代以前から日本語に夢という言葉は存在しています。しかし、そこには「睡眠時の夢」の意味しかなかったようです。
ところが、明治時代にdreamという言葉が海外から入ってきました。そのdreamには「睡眠時の夢」と「覚醒時の夢」の両方の意味がすでにありました。このdreamの意味の影響を受けて、日本語の夢にも「覚醒時の夢」の意味が後付けで追加されたようです。
では、それ以前の日本では、「覚醒時の夢」のことを何と表現していたのでしょうか?
どうも「覚醒時の夢」のことは、「志」という言葉を使っていたようです。いい言葉ですよね。志(こころざし)って。
「dream」の意味形成
日本語の夢が英語のdreamの影響を受けたことは、確かなようです。では、英語のdreamは、なぜ「睡眠時の夢」と「覚醒時の夢」の2つの意味を持つようになったのでしょうか?
英語の語源を調べてみても、dreamも元々は「睡眠時の夢」の意味しかなかったようです。しかし、時の流れとともに、覚醒している間であっても、現実から目をそらしている状態をdreamという言葉を当てるようになりました。”After they kissed, he strolled away in a dream.”といったような使い方です。日本語で言う「夢見心地」といった状態ですね。
さらにその後「夢見心地」から拡張されて、現実と一線を引く将来の理想や強い願望に対しても、dreamを使うようになりました。
こうして、dreamは「睡眠時の夢」と「覚醒時の夢」の二つの意味を持つようになったようです。
西洋と認識の違い
dreamの古英語はdrēamです。意味は「joy」です。それから考えると西洋における「睡眠時の夢」や「覚醒時の夢」に共通することは、そこに「喜び」があるのでしょう。
一方、日本では、「覚醒時の夢」に対して、古くは「志」という言葉を当てていることから、そこには「喜び」という印象は受けません。もっとストイックに「道を究める」といった印象を受けます。背筋がシャンとする感じがしますね。
最後に
2022年の寅年。私には仕事でもプライベートでも「夢」はあります。でも今年はそれをあえて「志」というようにします。志高く今年一年を過ごそうと新年に思います。
本年もどうぞよろしくお願いします。