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テキサス州オースティン在住の単身赴任者の記録

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仕事に役立つ「退職刑事」

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最初に

先日、日本での年末年始の一時帰国を終え、米国に戻ってきたアルマジロです。

今日は、帰りの飛行機の中で読んだ本について書こうと思います。日米間の飛行機の中では、映画を観て時間を潰すことが多いです。しかし、今回は帰国時の日本に向かう飛行機で、ほぼ観たい映画は観てしまったので、米国に向かう飛行機では読書で時間を潰そうと思っていました。

帰国当日の出発直前にこのことを思い出し、慌てて自宅の本棚をざっと見渡しました。時間のない中、都築道夫の「退職刑事」に目が止まったので、久しぶりに読み返そうと思って、全6巻あるうちの1、2巻をリュックに突っ込んで出発しました。

安楽椅子探偵とは

「退職刑事」は推理小説なのですが、推理小説の中でも「安楽椅子探偵」と呼ばれるジャンルの推理小説です。

まず、安楽椅子とは、坐る面と背もたれが傾斜した休息用の椅子のことです。地面との接地部が弓状になったロッキングチェアが安楽椅子のイメージにピッタリだと思います。ロッキングチェアに腰掛けた老人がうたた寝しているようなシーンは、アメリカ映画でありがちなワンシーンです。

つまり、安楽椅子探偵とは、その安楽椅子に座っている探偵、ということです。これじゃ、何のことか分かんないですね。ウィキペディアの言葉を借りると、

”現場に赴くなどして自ら能動的に情報を収集することはせずに、室内にいたままで、来訪者や新聞記事などから与えられた情報のみを頼りに事件を推理する探偵、あるいはそのような趣旨の作品を指す。” 

-Wikipedia "安楽椅子探偵"より

とのことです。

探偵が何らかの事情により、その場から動くことができないのです。頭は働くけど、体がもう動かない老人が一番しっくりくるので、安楽椅子探偵と呼ばれています。

私が過去読んだ安楽椅子探偵モノでは、障害があるためベッドで寝たきりの青年が主人公のもの(天藤 真「遠きに目ありて」)や、同じ都築道夫の作品ですが、風俗嬢が主人公になるものもあります。「泡姫シルビアの華麗な推理」というタイトルです。

これは官能本ではなく、風俗嬢が同僚やお客さんから不思議な話を聞いて、それを謎解きするという推理小説です。相当昔に読んだ本なので内容は思い出せないですが、これも凄く面白かった記憶があります。今も本棚のどこかにはあるはずです。

 

退職刑事とは

退職刑事の主人公は、文字通り退職した元刑事です。自分の息子が現役の刑事であるため、夜な夜な息子夫婦の家に押しかけ、息子が担当している事件を根掘り葉掘り聞いて、事件の真相を突き止める、と言うお話です。主人公が動き回れないという大きな制約があり、二人の会話で終始するので、物語1話は短いです。20分ぐらいで読めます。元刑事が、与えられた条件全てに矛盾しない仮説を立てていく過程がとても楽しいです。

かつてエリヤフ・ゴールドラットの「ザ・ゴール」と言う書籍が流行りました。あれは小難しい思考プロセスを物語の中で説明する、と言う手法を取ったことが世にウケた一因だと思います。この「ザ・ゴール」が流行った頃、私は他に問題解決、ロジカルシンキング、仮説思考などの書籍を気に入って読んでいました。

同時に、これらの思考方法を物語風に表現したのが、安楽椅子探偵小説ではないかと思うようになりました。その中でも、特に都築道夫の退職刑事はよくできた物語ばかりだと思います。

ただ、内容は面白いですが、時代背景は1970年代の昭和で、文体や描写はかなりハードボイルドですので、その点で好き嫌いが別れるかもしれません。読んでるだけで、タバコの煙が充満した重苦しい雰囲気の部屋に自分もいるような気分になります。

ちなみに、父親(退職刑事)は朝日を、息子(現役刑事)はハイライトを愛飲しています。時代ですね。

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仕事との共通点

私がなぜ、かつて安楽椅子探偵小説にハマったかと言うと、仮説を立てていく過程が仕事にも通じるな、と感じたからです。

仕事をしていると、どんな職種であれ、職場環境に問題が生じたり、製品に不具合が生じたり、なにかの結果が想定通りいかなかったり、ということがあると思います。

そんな時、与えられた情報から、仮説を立て、原因を追求していくという作業が必要になります。

この作業をしているときは誰でも、意図する・しないに関わらず安楽椅子探偵になっているのです。

自分が優秀な安楽椅子探偵になるために、退職刑事はいいお手本になる、かもしれませんね。

安楽椅子探偵モノの推理小説をまだ一度も読まれたことない、という方はぜひ一度読まれてみてはどうでしょうか?面白いですよ。

 

本日登場した安楽椅子探偵の書籍

ではまた〜