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テキサス州オースティン在住の単身赴任者の記録

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「夢」と「Dream」:二つの意味の不思議

(Image Creatorにて作成)

 

最初に

今これを書いているのが2022年の元旦です。新年にはよく初夢の内容が話題になります。日本では、初夢に見ると縁起のいいものとして、一富士、二鷹、三茄子とよく言われます。

 

「富士」は日本一の山であり、その字は「無事」とも掛けられています。「鷹」は賢くて強い鳥であり、「高い」と掛けられています。「茄子」は「事を成す」と掛けられています。

 

そんなことを考えながら、自分の初夢はどんなだったかなと考えていてふと思ったことがあります。「夢」って英語で「dream」だけど、その両者に不思議な共通点があるなって。

 

「夢」が持つ二つの意味

ご存知の通り「夢」には大きく二つの意味があります。一つは「眠っている間に、種々の物事を見聞きすると感ずる現象」を表す夢。「昨夜見た夢は怖かったなぁ」の夢です。これを以降、「睡眠時の夢」と呼びます。

 

もう一つは「将来実現させたい希望や理想」という意味の夢。「将来、宇宙旅行に行くことが夢です」の夢です。これを以降、「覚醒時の夢」と呼びます。

 

「夢」と「dream」という言葉の不思議

これって、よくよく考えると不思議ではないですか?「睡眠時の夢」と「覚醒時の夢」って、全然別モノなのに「夢」という同じ文字を当てはめています。「睡眠時の夢」は生理現象です。我々の意思でどうすることもできません。受動的です。

一方、「覚醒時の夢」はもっと能動的です。「俺が実現してやる!」っていう意志を感じます。もし自分がこの両現象に名前を付ける役割を担ったとしたら、同じ言葉を割り付けるとはとても思えません。

 

さらに不思議なのは、英語のdreamにも「睡眠時の夢」と「覚醒時の夢」の両方の意味があると言うことです。

 

日本語でも英語でも、全く異なる2つの現象に同じ言葉を当てはめています。これって偶然でしょうか?それとも何か理由があるのでしょうか?

 

 

「夢」の意味形成

不思議に思ったので、少し調べてみました。まず、明治時代以前から日本語に「夢」という言葉は存在しています。しかし、そこには「睡眠時の夢」の意味しかなかったようです。

 

ところが、明治時代にdreamという言葉が海外から入ってきました。そのdreamには「睡眠時の夢」と「覚醒時の夢」の両方の意味がすでにありました。このdreamの意味の影響を受けて、日本語の夢にも「覚醒時の夢」の意味が後付けで追加されたようです。

 

では、それ以前の日本では、「覚醒時の夢」のことを何と表現していたのでしょうか?

 

どうも「覚醒時の夢」のことは「志」(こころざし)という言葉を使っていたようです。いい言葉ですよね。って。日本人なら、お正月に正座して習字で書きたいと思う字のランキング1位の漢字ですよね。

 

「dream」の意味形成

日本語の夢が英語のdreamの影響を受けたことは確かなようです。では、英語のdreamは、なぜ「睡眠時の夢」と「覚醒時の夢」の2つの意味を持つようになったのでしょうか?

 

英語の語源を調べてみても、dreamも元々は「睡眠時の夢」の意味しかなかったようです。しかし、時の流れとともに、覚醒している間であっても、現実から目をそらしている状態をdreamという言葉を当てるようになりました。”After they kissed, he strolled away in a dream”(キスをしたあと、彼は夢見心地でした)といったような使い方です。日本語で言う「夢見心地」といった状態ですね。覚醒はしてるけど、上の空な状態です。

 

 

さらにその後「夢見心地」から拡張されて、現実と一線を引く将来の理想や強い願望に対しても、dreamを使うようになりました。つまり、

 

睡眠時の夢:昨夜見た夢、楽しかったなぁ(受動的)

覚醒時での夢見心地の状態:さっきの出来事、まるで夢のようで楽しかったなぁ

覚醒時の夢:あの楽しい出来事を手に入れてやる(能動的)

 

という流れの中で、dreamは「睡眠時の夢」と「覚醒時の夢」の二つの意味を持つようになったようです。

 

西洋と認識の違い

dreamの古英語はdrēamです。意味は「joy」です。それから考えると西洋における「睡眠時の夢」や「覚醒時の夢」に共通することは、そこに「喜びの感情」があるのでしょう。

 

一方、日本では、「覚醒時の夢」に対して、古くは「志」という言葉を当てていることから、そこには「喜び」という印象は受けません。もっとストイックに「道を究める」といった印象を受けます。背筋がシャンとする感じがしますね。

「夢」が「叶えられたらいいなぁ」ぐらいの能動具合だとしたら、「志」は「絶対、叶えてやる」っていう強い意志を感じます。

 

 

つまり、元々は日本では将来に持つ夢には「道を究める」という厳しい姿勢を持っていたことが伺えます。一方、西洋では将来に持つ夢に対して「喜び」という感情を持っていたようです。今は日本でも西洋の影響が強く、「覚醒時の夢」に対しては「喜び」のイメージの方が強いような気がします。

 

最後に

2022年の寅年。私には仕事でもプライベートでも「夢」はあります。でも今年はそれをあえて「志」と言いたいと思います。志高く今年一年を過ごそうと新年に思います。

本年もどうぞよろしくお願いします。

 

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虎の写真を探したのですが、これしか見つかりませんでした。去年のハロウィンのときのやつです。トラかな?なんか分かんないけど、お気に入りの写真です。

 

それでは、またー